森のくまさん

北海道公立小中学校事務職員協議会 会長 名達 和俊(なだち かずとし)

どうやら今年はドングリが不作のようです。猛暑などの異常気象が大地の恵みに影響しているのかもしれません。そのドングリ不足が原因なのか北見市では一昨日(11月14日)の朝、熊が目撃され、小学校では集団下校、中学校では部活動を中止しての下校措置がとられました。熊さんは教育課程を簡単に変更してしまいました。熊さんの力は偉大ですね。熊さんは奥深い山の住人と思っていましたが、最近の熊さんは人間社会を投影するかのようにコンクリート社会のファストフードを求めているのでしょうか。なかには冷蔵庫を開けビールを飲む洒落た熊さんもいるようです。北海道といえども、熊が街中を闊歩する光景は日常ではありません。やはり異常な出来事です。熊さんの住環境が開発によって狭まったこと、熊の保護政策が個体数を増やしたこと、自然に左右される山の恵み、人間の出すごみが山里に下りてくる呼び水になることなどが複合要因となっているのだと思います。

話は変わりますが、過日、生徒指導の研修会で興味深い話がありました。「水槽のなかで泳ぐ魚」の話です。魚は子どもで、個を大切にした生徒指導の在り方を語っていました。息苦しい魚や病んだ魚にどのような薬・餌を与えるかを問うたものでした。しかし、ちょっと見方を変えると魚の棲む水槽の水をどのようにするかという視点も必要だと感じました。澱んだ水を澄んだ水に変える循環装置や水草や石の配置も大切なことであり、傷ついた魚を環境によって蘇生させることも視野に入れるべきだと思います。翻って私たちが勤務する学校を見たとき、子どもを魚に例える不適切さはありますが、毎日生活する学校と云う場の環境をどのように創っていくかが学校事務職員にとって大切な視点ではないのでしょうか。泳ぐ魚だけに目が行きがちですが、水槽と云う大きな枠組みと水質などの泳ぐ環境そのものを見つめることも大切なことと思います。

さて、昨日出没した熊さんは現在のところ発見されていません。熊さんの生活の場である山のなかに戻ったのでしょうか。危険が待ち構える街場より、木の葉に囲まれた自然のなかで夢を見ながら次の春を待って欲しいものです。