北海道公立小中学校事務職員協議会 会長 常陸 敏男(ひたち としお)
自分でお寿司を握ってみました。鯛と鮪とハマチと〆鯖です。
前列左から二つ目にご飯粒がついていますね。
デジタル一眼レフカメラで撮影
あるマチの事務職員グループが、教育委員会が支給する就学援助費のうちから、保護者が学校に納める学用品費の一部又は全部を一旦校長の指定する口座に納めてもらうことで、諸費用の未納対策とすることができないかと考え、教育委員会と協議を行いました。教育委員会は、そのマチの財政担当が、「学校と保護者の間に債権債務関係が存在していなければ、(上記のような就学援助費の支払い方法を行うことは)出来ない」との考えを示したことから、実際の保護者負担金についてどうなっているのか調査をしてほしいとの意向を事務職員グループに伝えてきました。事務職員グループは調査を行うこととはしたものの、何かが引っかかっておりました。
財政当局が言うところの「学校と保護者の間に債権債務関係が存在している」こととはどういうことなのだろう・・・。学校が、その年に使用するワークやドリルやキット教材や実習材料費などを決定し、その代金を支払うように求めることで、学校と保護者の間に債権債務関係が成立するということなのだろうか。契約書を交わしているわけでもないのに債権債務が発生したり成立したりするのだろうか。このことが一つ目。次に、近頃では中学校の修学旅行の費用は旅行業者に保護者が直接支払い(口座引き落としなどで)する方式が大半を占めていると思われますが、旅行業者に尋ねてみると、これは「保護者との契約を結んで旅行費用を納めてもらうので、旅行会社と保護者の間に債権債務関係がある」ということのようです。ではこの場合は「学校と保護者の間に債権債務関係が存在していない」のだから、マチの財政担当者が言うように就学援助費を校長の指定する口座に納めることはマチとしてはできない、ということになるのでしょうか。だったら、就学援助認定生徒については、旅行業者との支払い契約を結ばずに、その生徒の費用は保護者→学校→業者という流れなら、マチはOKするのだろか。その場合なにをもって「債権債務関係」が成立しているとするのだろうか。これが2点目。そしてそもそも、義務教育の現場の一体何時何処に「債権債務」だの「契約」だのという概念が入り込んでいたのだろうか。これは私の勉強不足なのかもしれません。しかし、義務教育学校で児童生徒・保護者と教育委員会・市区町村の間で何らかの契約書が交わされている場面についての私の記憶は皆無です。(給食費はどうなのでしょう・・・) 修学旅行費用も公費化すべきというのが私の考えですが、保護者負担となっている現状においてさえ、これを学校と保護者間の「契約」と定義づけることは、たとえ法令条例に則りそうしなければならないとしても、ある種の事務的で無機質な、そして教育内容を商品化するような状態に置くことのように思え、どうにも胸のつかえが取れません。これが3点目。
「債権債務」という思いもかけない法律用語の出現にすっかり狼狽してしまい、今までこの業界で仕事をしてきたことは一体何だったのだろうと落ち込む始末でしたが、げんなりしつつも、とっかかりがほしいと思い、学生時代の民法の教科書(未だに当時の教科書を本棚に立てているのは、勉強してこなかったことに対する贖罪なのかはたまた言い訳なのか・・・)を引っ張りだしてみました。ぱらぱらとページを捲っていると、古い箸袋が出てきました。箸袋には“春駒”の文字が・・・。これは、学生時代に住んでいた学生寮で、新入生歓迎会や寮自治会総会などで宴会を行うときに決まって全員分用意された寿司折りの注文先のお寿司屋さん、その名も“春駒”の箸袋ではありませんか。少し醤油の染みた痕がついていますが、それはまさしくあの懐かしい、一度だけ寮の先輩に連れられてお店に行ったことのある“春駒”の箸袋だったのです。
世の中便利(?)になったもので、その店はストリートビューで簡単に確認することが出来るし、内部の様子も分かります。画面に映し出された“春駒”は当時よりも綺麗になっているような気がしましたが、L字のカウンターは当時のままのように思えます。パソコンに向かってあれこれ画像を見ているうちに、「債権債務」のことはすっかり脳裏から消え去ってしまっていました。ああ、情けない。
その後、「債権債務関係」がどのように整理されたか分かりませんが、とりあえず校長口座への就学援助費支払いが可能になる方向で検討が進んでいるようです。でも、数々の疑問は解消されないままです。
2015年12月11日